2018年08月29日

女性研究者に敬意を表して

先日、10年以上掛けて仕上がった仕事がようやく論文になった。その研究の内容からして完結するのに10年は長すぎるのだが、それにはそれなりの理由があった。それを書きたくなって久しぶりにこのブログを更新している。

この論文の仕事には、オーニシ2号、トッシー、アヤッチという3名の女性研究者が関係していた。彼女らが研究室に参加した時期はそれぞれ違っていて、オーニシ2号は 2004-2007 年、トッシーは 2007-2012年、アヤッチは2002年-2016年のあいだで研究室に在籍していた。オーニシ2号は今回の研究のネタを見つけたのだがそれを調べる間もなく、その前段階の論文をひとつ書いたところで契約期間の満了で当研究室を去った。結局、今回の論文にはオーニシ2号の実験結果は盛り込まれていないので彼女の名前は論文の著者リストにはない。

そのあとしばらくは人手不足でそのネタには手を付けることができなかった。細菌学の領域はいつだって人手不足である。それから2年ほどしてから、他のプロジェクトに携わっていたトッシーがオーニシ2号のネタを引き継ぐことになった。トッシーはひとつ目の決め手となる実験結果を出して、それを第3回の細菌学若手コロッセウム(若コロ)で発表した。今年の若コロが(台風で中止になったけれど)第12回だったので9年前のことになる。

そのトッシーも任期満了を迎え、最後に引き継いだのがアヤッチだった。アヤッチは苦労に苦労を重ねて、ネタになった疑問を説明できる実験結果をやっと全て揃えたところで、ご主人の転勤に伴ってやむなく退職していった。そのあと、私とメールとテレビ電話のやり取りをしながら仕上げたのが今回の論文である。

彼女たちはそれぞれ独身の頃に研究室に参加し、オーニシ2号は退職後まもなく結婚、トッシーとアヤッチはその間に結婚してそれぞれ2児の母親になった。一時期はトッシーとアヤッチが同時に産休に入ったりして、実験を承継する者が誰もいなくなってこのプロジェクトを諦めかけたこともあった。しかし、これを論文化できたのは彼女たちが丁寧に申し送りをしたり正確な実験ノートを残したりしてくれて、それを元に生データに辿れたり過去の実験方法を確認できたおかげである。彼女たちに敬意を表して、本当は第12回若手コロッセウムで私が(若手ではないけど)この成果について感謝を込めて発表させていただこうと思っていたのだけど、前に書いたように台風で中止になっちゃったので代わりにここに書いた。

論文はASM(American Society of Microbiology:米国微生物学会)が刊行するmBio という中堅の雑誌に掲載することができた。真核細胞にあって本来は細胞内のリン酸化シグナル伝達を制御する14-3-3 という分子が、細菌の病原因子を不活化する例を世界で初めて示した研究である。

、、人気ブログランキング参加中です、、
人気ブログランキングへ
応援のクリックをよろしく


posted by Yas at 19:22| Comment(1) | 科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
論文にするのに時間がかかったのは彼女たちのプライベートの問題だけではないと思います。
Posted by spengle2001 at 2018年08月29日 20:29
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]