2016年12月30日

高校生のためのWinter School @微研

 先日(12月27日)に、「高校生のための Winter School@微研」という催し物が開催された。研究活動を広く外部に伝える、いわゆるアウトリーチ活動のひとつである。 とても盛況で、会場は今回の対象の高校生達で溢れていた。

Wintersch.jpg 私が様子を見に来た時は、ブース展示の説明の時間だったのか高校生の質問とそれに応える展示者達の声でとても賑やかだった。開催準備がよかったということだろう、微生物病研究所広報室の方々のご努力には感謝するばかりである。当研究室からは助教のシンザーと大学院生のイッシーが細菌の顕微鏡観察のブースで参加してくれていた。ラボのメンバーがこうした形で参加してくれるのは、ラボを主宰する立場としてはとても嬉しいものでもある。

 微研は最近、広報に力を入れ始めている。そのための予算措置の比重も高くなった。社会に向けて活動をアピールすることはいまの国立大学(法人)にとって非常に大切なことなので当然と言えば当然かもしれない。微研内でも「広報に力を入れる」ことは暗黙の合意事項のようになっている。しかし「なぜ広報に力を入れないといけないのか?」を考えると、すこし暗澹とした気持ちになってくる。無論、広報は必要だし、いまの微研の広報室の皆さんの努力をみると頭が下がるばかりなのだが、ことはそんなに単純でもなさそうだ。

 なぜ広報が必要なのか? 社会へのアウトリーチ活動は、一般の方々に基礎科学(の営み)を理解していただくために絶対に必要である。今回のように高校生が対象ならば、理科教育における啓発とか将来の科学者を育成するという観点で大切だ。一般社会人対象だと、基礎科学を支援する空気を醸成するのに役に立つかもしれない。基礎科学の存在意義を知っていただくために、こういったことは必要だ。その報いはいずれ、大学に戻ってくる。しかしそれはずっと先の話だ。これに私たちは今現在の研究所の予算を使っている。

 一方、大学の運営費交付金は「大学改革促進係数」というわけのわからない名前の係数(大阪大学は確か1.3%)分を毎年削減されるという仕打ちに遭っている。まるで財務省や文部科学省から「国立大学(法人)は自助努力で稼ぎなさい」と言われているようだ。私はそのような文言を官公庁が発行する文書で読んだことはないが、多分そう言うことで間違いないだろう。これに対応するために国立大学の授業料を値上げするのには限界がある。(今でも私たちが学生時代だった頃に比べ充分高い。ちなみに私の学部生時代の授業料は確か9万6千円/年だった)。知財で大学の運営費を稼ぐなどは、現段階では夢物語だ。そもそも資金に乏しい大学が、自己資金で特許申請できる件数などわずかである。では、寄附はどうか? 大学の活動を理解していただいて寄附を潤沢に頂戴できるようになるまでには、寄附という行為がそれほど社会に根付いていない我が国では、かなりの時間が必要だ。そして繰り返しになるが、そんなことをも視野において、私たちは減額され続けてている予算内で広報活動に注力している。今年も来年もそのために予算を使う。これはまちがいなく自助努力のひとつである。しかしそれで「大学改革促進係数」で減額された交付金分を稼ぐのは今は無理だ(ひとによっては「永久に無理だ」というかもしれない)。つまりこれは、今のところ、砂漠に水を撒いて池を作ろうというような努力に似ている。水を撒くのが無駄だというのではない。砂漠に身を置かざるを得ない状況が理不尽だという意味だ。

 繰り返すが、微研の広報室の方々の活動は微研として自慢できるし、無くてはならないものだ。しかしその先に明るい見通しがあるのかと考えると、脳天気なことは言っていられない。と思う。


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posted by Yas at 19:05| Comment(1) | 科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しております。

大学改革促進係数という名称は現在はなくなっておりまして、「機能強化促進係数」というものに化けています。
さらに第3期からはこの係数で召し上げたお金を重点支援という名目で再配分し、各大学一律ではなく、75%〜120%までの間でよさげな大学とイマイチな大学で運営費交付金に色が付けられるようになりました。
ちなみに、H29年度の大阪大学は99.6%で、同枠組みの大学の中ではちょうど中間です。

現在の部署におりますと、なかなかにヘビーな話題が次々に舞い込んできますが、先生の仰るとおり、大学本部も努力はしているけども光明は見えず、といったところです。
最近は、いろんな関係団体がこれ以上の削減は意味が無いと提言しているようですが、文科省も財務省との関係があるからなのか、なかなか思い切った舵切りには至っていないようですね……。
Posted by ジムノF at 2017年01月27日 15:53
 遅レスですいません。コメントありがとうございます。

いま、部局の予算委員長を担当しているのですが、予算の獲得や配分の話題のたびに溜息のでる思いをしています。まさか在職中に「大学で儲ける」ことを考えることになるとは思ってもみませんでした。まぁ、考えたからといって、大学しか知らない身で、いい考えも浮かぶわけもないのですが、。

Posted by Yas at 2017年02月26日 16:46
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