2016年05月26日

関水先生とカイコ

 先日、研究所で主催するアドバンストセミナーの演者として、帝京大学医真菌研究センターの関水和久先生をお招きした。関水先生は昨年度まで東京大学大学院薬学系研究科で教授を務められ、今春から現在の職に就かれている。

 先生は生命科学分野の伝説的偉人である、DNA ポリメラーゼ研究で有名なアーサー・コーンバーグのもとに留学された経験をお持ちだ。ご自身も「かつては DNAの複製の研究をしていた」とおっしゃるが、今はカイコを実験動物に用いて、細菌感染の解析のみならず様々な分野でのカイコの応用を試みられている。カイコは代表的な病原細菌に感受性で、外来分子に対する代謝応答もあるし基本的なサイトカイン反応性も持っている。さらには糖尿病カイコを作ることだってできるしインシュリンで治療もできる。そのうえ、実験動物としては廉価で大量飼育も可能だ。これを抗菌剤や新規有用化合物のスクリーニングに使わない手はないというのが関水先生の持論である。これほど多彩なカイコ利用の技術開発を進められているのは世界的に見ても関水先生をおいて他にない。

 カイコといえば、幼い頃、私の住んでいた鶴橋・玉造界隈にはカイコと桑の葉を売るプラモデル屋さんがあって、毎年初夏になるとそれを買ってきては家で飼育していたものだ、。何が楽しかったのかよく分からないが、繭を作らせて蛾になるまで成長させて卵を産ませていた。ただし、卵から生まれた子虫はどうしても大きく育てることはできなかった。その話をすると関水先生は嬉しそうに「ホリグチさん、カイコのこと知ってますね」と笑ってくださった。聞くと、関水先生も子供の頃にやっぱりキリギリスやアゲハチョウを熱心に飼育されていたらしい。根っからの昆虫好きである。

 関水先生はこれまでに、カイコを使ってブドウ球菌の転写制御系の解析、有用乳酸菌の分離、新規抗菌剤の発見までされている。さらには、カイコの冬虫夏草を作って売り出そうとか、抗がん剤の開発をしたいけれどカイコが癌にならんとか、痴呆症の研究をしたいけど、痴呆症のカイコと正常なカイコの区別がつかんとか、カイコを中心にどんどん話が広がっていく。

「カイコが痴呆症になったら、やっぱり徘徊するんですかね?」
「いやー、あいつら普段から徘徊してるからねー」

 研究者同士の会話の醍醐味は、研究をネタにした馬鹿話にある(キッパリ)。関水先生はお酒を一滴もお飲みにならない(「普段からやさぐれて酔っ払ってるみたいだけど」、、とはご本人のお話である)ので、失礼ながら(失礼でもないかもしれない)私よりも何年も先輩の関水先生とこんな研究馬鹿話ができるなどとは夢にも思わなかった。おかげで、この日は先生と楽しい夕食の時間を過ごすことができた。

 関水先生は現細菌学会の会計担当理事でもいらっしゃる。先生、今後とも理事会運営でも研究でも色々とお世話になると思いますが、、よろしくお願いいたします。


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posted by Yas at 18:27| Comment(0) | 私的先生 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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