2015年10月06日

大村智先生

大村智先生、ノーベル賞受賞、誠におめでとうございます。かつて北里研究所に所属していた者として、とても嬉しく受賞の一報を聞きました。

また受賞のニュース直後にご連絡いただいた報道関係の皆様、対応をいたしませず失礼いたしました。ちょうどその時、ちょっと複雑な仕事をしていたこともあり、また対応できたとしても大村先生について大したコメントもできませんので、どうぞお許しください。中には、先日のブログで「大村先生と話をさせていただいた」と書いた記事を目ざとく見つけて連絡されてきた方もいらっしゃったようですが、、本当に少しお話しをさせていただいただけですので、、。気の利いたハナシができるはずもございません、、。

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さて、受賞理由になったイベルメクチンのこと。「イベルメクチンってなんですか?」と家内を含めた何人かに尋ねられた。、、我々に身近なものでは、ペットのワンちゃんに夏場に毎月飲ませるフィラリアの薬がある。あの成分がイベルメクチンである。イベルメクチンのおかげで、イヌのフィラリアは死の病から予防できる病になった。もちろんイヌフィラリアのみならず、オンコセルカ症をはじめとしてイベルメクチンの適用範囲はさらに広く大きい。その社会的インパクトは凄まじく、当時私が所属した頃の社団法人北里研究所の経営を財政面で支えた薬でもある。だから、北里関係者(少なくとも薬学部関係者と旧北里研究所関係者)で、イベルメクチンを知らない者はいないと思う。

大村先生は日本細菌学会のただ一人の特別名誉会員でいらっしゃる。最近、あることで学会にご支援をいただいたので、先日はそのお礼とご挨拶を兼ねて訪問させていただいた。実は、大村先生とはそれまで何度も会合などでお会いしているのも関わらず、その時に初めてお話しをする機会を得たのである。短い時間だったが、大村先生はこの時、日本の微生物学(細菌学会かもしれない)の将来についてしきりに心配していらした様子だった。

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その時にいただいた、大村先生のご著書。いま思えば、サインも頂戴しておけばよかったかも。





ところで、私には、大村先生についてもう一つ思い出がある。30年近く前、博士号を取得した私はあまり深い考えもなしに、北里研究所の支所である家畜衛生研究所に就職した。就職してすぐに、家畜衛生研究所のニーズと私のやりたいことが全く合っていないことに気がついて愕然とし(就職について深く考えなかった私の方に責任があると言っていい)、転職することばかりを考えて仕事をする毎日であった。そうして1年が過ぎ、2年が過ぎようとしたある頃、白金の北里研究所(「本所」と所員は呼んでいた)に2ヶ月の出向が許された。好奇心の強い私は、出向中に所内の様々な研究室に押しかけて実験やディスカッションをして過ごしたのだが、それがきっかけで、私を本所に異動させるという話が持ち上がった。ところが、このことが本所で正式に決まる前に、間接的に家畜衛生研究所長の耳に入ることになって、異動話は本所と支所の間でこじれにこじれる事になってしまったのである。全くの誤解なのだが、「(家畜衛生研究)所長の頭越しで異動の話を進めるような奴(私のこと)はけしからん」というわけだ。
このことが当時(本所の)副所長だった大村先生の耳に入り、「そのホリグチとかいう所員の話を聞いてやるから、連れてきなさい」と、天下の大村先生が本所と支所の仲裁にはいる恰好になった。しかし、異動の話がこじれて長引いている間に、すでに私は退職して研究員で微研に移ることを決めていた。この話を内々に聞いて、ここで大村先生に仲裁いただいては微研に行けないと思った私は、面談の日程調整をされる前に即座に辞職届を出したのだった。

その時は「これが人生の分かれ目になるかもしれない」と、当時の私にすれば必死の思いで辞職したのだが、今は、大村先生に仲裁いただいて本所の所員となっていたらまた違った人生になっていたかも、、と気楽な事を考えたりしている。私が細菌学会の理事長になった時に、私の盟友である北里大学の阿部教授がそのことを少し大村先生に話してくれたらしいが、先生はあまり覚えてらっしゃらず「そんな人もいたかなぁ」と素っ気ない返事だったということだ。
当時の大村先生は、今の私と同年齢くらいだったと思う。あの頃から私にとっては「とっても偉い恐い先生」だったが、今回の受賞で「もっともっととっても偉い先生」になられた。

大村先生、この度は本当におめでとうございます。今後とも日本細菌学会をよろしくお願いいたします。


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posted by Yas at 19:19| Comment(0) | 科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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