2015年08月01日

夏目漱石のブログ

 夏目漱石の「硝子戸の中」という小品を読んだ。

 ある日、ぼんやりと「なんかええことないかいな」とネットで青空文庫を検索していて見つけた。小説ではない。日々、漱石の自宅を中心に身の回りで起こる事どもをあれやこれやと書いている、いわゆる随筆である。この作品の最初の項で、漱石は「私の書くような閑散な文字を列べて(新聞の)紙面をうずめて見せるのを恥ずかしいものの一つに考える」と書いている。作品のボリュームから考えて、本当に新聞紙面をある短い期間だけ埋めるために依頼されたものなのかもしれない。

 漱石特有の軽妙だが深みのある文章で綴られた「日々の出来事」が、漱石の人となりを透かして見せる。そんな作品である。「ある意味からして、だいぶ有名になった」猫の話が出てくるので「吾輩は猫である」以後に書かれたもののようだ*。世間で評判の話題を取り上げるでもなく、自らの経験に深い洞察を与えるでもなく、ただひたすら「犬も歩けば棒に当たる」ような在り来たりの話が繰り広げられている。

 これは、漱石のブログやな。ぼんやりと読みながらそう思った。意味深なメッセージが隠されたような、漱石のその他の作品とは全く違う、脱力感の漂うブログ。このブログは、あらかじめ用意されていたかのような、それまでの項をまとめるようなわざとらしい文章で三十九回目に突然終了する。「漱石の作品にもこういうものがあったんや」とちょっと驚いたのでここに書いた。

 ところで、話が全く変わるが、イエスのクリス・スクワイアが6月に亡くなったのを偶然知った。1970-80年代のロック好きなら彼の事をご存知だと思うが、私の好きなベーシストであった。謹んでご冥福をお祈りします。

*:あれっと思って調べたらやっぱり「吾輩は猫である」は漱石の処女作だ。だから「硝子戸の中」がそのあとに書かれたのは当然だった。


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posted by Yas at 14:08| Comment(0) | 非科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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