2012年05月27日

ヒストレスヴィラ

 「ヒストレスヴィラからの脱出」という筒井康隆さんの短編小説がある。ずいぶん昔に読んだ小説だが、妙に印象深く心に残っている。短編小説だから、ネタばらしにすぐになってしまうのであらすじは書かないが、主人公の身に次々にイヤな出来事が降り掛かるという、とにかく読んでツラい小説である。炎天下の砂漠をスーツと革靴姿で歩くような、あるいは土砂降りの中、泥濘の長い登り坂を重い荷物を背負って歩くような、そんな抜き差しならないようなツラさを感じる小説である。この小説を読んで何十年も経つが、私は今でも何かツラい事がある度にこの小説のことを思い出す。

 先日、クルマの接触事故に見舞われたことはすでに書いた。事故を起こした時はその場で警察と自動車保険の契約会社に連絡するのが鉄則である。すぐに、iPhone を使って連絡をすませる。しかしそのあと研究室に着いてから、保険会社との何度目かのやり取りの最中に、突然 iPhone で私の声が相手に聞こえないという症状がまた出た。その場はすぐに研究室の電話に掛け直してもらって凌いだが、それからぱったり iPhone で通話ができなくなった。この症状は以前にも出たことがある。その時は iPhone を出荷状態に戻す「復元」をして復帰できたのだが、今回はダメだ。この症状は修理では対応できず、保証期間は過ぎているので、新しいものを買い直さねばならないのは前回の時に確認済みだ。、、10月にはiPhone5が出ると噂されているのに、、今更 iPhone 4S を買う気にはならない。ローンだって残っている。、、ということで皆様、電話通話ではしばらく対応できませんので、私に連絡をくださる場合はメールでお願いいたします、、、。

 クルマの接触事故の次の日、アップルのワイヤレスキーボードが壊れた。朝、いつものように研究室に出勤して、いつものようにコンピュータのスイッチを入れるが、いつまでたってもキーボードがレスポンスしない。電池を入れ替えてもダメだ。コンピュータを再起動して、Bluetoothデバイスの設定をし直してもダメだ。説明書を見てみると、キーボードの起動方法や操作方法は書いてあっても、不具合については何も書かれていない。このキーボードは新製品として販売されてすぐに買ったので、ほぼ5年くらい経っている。すぐに必要なものだし、仕方ないので買い替えることにした。

 あわてて研究室のサーバーに使っているキーボードを持って来て仕事をする。この金曜日に、母校の大阪府立大学大学院獣医学科で3コマ(4時間半)の講義を依頼されていたのだ。普通の講義なら問題ないのだが、依頼してくれた山崎伸二教授によると「受講生のほとんどが留学生なので、せめてスライドだけでも英語でお願いします」ということだ。4時間半のうち、最後の1時間半は自分の研究内容の話をするので、元々スライドは英語で書かれている。問題は3時間分の、講義用のスライドだ。今まで講義用のスライドは学生さんのためにわざわざ日本語で書いていた。ほぼ100枚ほど、、。これをエッサエッサと英語に書き換える。キーボードの叩きすぎか、トラックパッドでタップをしすぎたのか、木曜日の夕方には右手薬指の関節あたりが内出血していた。

 金曜日。朝6時に起床。大阪府立大学獣医学科は大阪府の最南端(と言ってもいいほど)にある。2時間ほどかけて最寄りの駅「りんくうタウン」に到着。朝9時から講義がスタートする。受講生に「日本語の講義と英語の講義とどっちがいい?」と尋ねると満場一致で「英語」と答える。しゃぁない、講義でも学会でもノープランで4時間半も英語で喋ったことないが、スライドもあるしなんとかなるやろ、、と、それから昼食をはさんで4時間半、、、I was totaly exhausted、、ヘロヘロになった。んでも、まだ終わらない。山崎さんにはさらに依頼されて、この日の夕方の大学の集談会で講演をすることにもなっていた。、、ヨイショといつも通りに講演を始めたつもりだったが、疲れもピークであんまり調子が出ない。、「ヒストレスヴィラからの脱出」のことを思い出したのは、その時だった、、、。

 講演が終わって、泉佐野にある名店「たかだ」で、山崎さんと眞実ちゃんと飲む。最近の読者さんのために解説すると、眞実ちゃんは数年前まで私の研究室で頑張ってくれて今は府立大学獣医学科の教授になっている。地魚を中心に美味しい魚を出してくれる「たかだ」の料理は最高だ。7時前から飲みはじめて、3時間以上馬鹿話を楽しみ、午後10時半すぎ泉佐野駅発の特急ラピートの時間になる頃には、すっかり疲れも忘れて上機嫌になった。眞実ちゃんが用意してくれたラピートの指定席に行ってみると、そのすぐ後ろの席に高校のバスケットボール部時代の後輩のイケウチがいた。

IMG_1338.JPG イケウチくんと、、。

「うひゃぁ、イケウチっ、こんなとこでなにしてんのや?」
「ホリグチさんこそ、こんなとこでなにしてはるんですか?」
 電車に乗ってて「なにしてる?」もクソもない。お互い、家に帰るのに決まっている(イケウチは、海外出張の帰りで関空からラピートに乗ったということだ)が、偶然の出会いは気持ちを高揚させる。ということで(なにが「ということで」かわからんが)思わずビールで乾杯する。

 ここのところ、仕事は詰まってたわ、クルマは当てられるわ、iPhone は故障するわ、キーボードもダメになるわ、難物の講義や講演で疲れ果てるわで、ヤな感じだったが、仕事が一段落すると「たかだ」の魚は美味いわ、山崎シンちゃん、眞実ちゃんとの馬鹿話も楽しかったわ、最後に久しぶりに思いがけず懐かしい後輩に出会うわで、最後はいい気持ちになった。

ということで、この日はヒストレスヴィラからなんとか脱出できた。

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posted by Yas at 22:39| Comment(0) | 科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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