2011年09月27日

光より速きわれら


 先日、素粒子ニュートリノの速度が光速より速いという実験結果が発表された。アインシュタインの相対性理論を覆す、驚天動地の発見である。あまりの予想外の結果だったため、発表まで約6ヶ月をかけて再検証したという。関係の研究者らはなお慎重で、世界中の物理学者に検討してもらうべく全データを公開することにしたと敢えて言い添えている。さらに、この結果が科学全般に与える影響の大きさから、拙速な結論や物理的解釈をするべきではないとの考えを示している。

 このニュースを聞いた私が最初に感じたのは、関係した科学者達の真摯で客観的な態度である。物理学のお話しなので、私には具体的にはわかるはずもないが、おそらく細心の注意を払って実験が組まれての結果であろうことは想像できる。でなければ、半年もかけて再検証するはずがないし、「拙速な結論をするべきではない」と補足することもないはずだ。

 また一方で、この話を聞いて、昨年暮れに発表されたヒ素を DNA に取り込む微生物の研究を思い出した。Science 誌に掲載され、「地球外生物の存在する可能性を示すデータ」として NASA がエキセントリックにマスコミ発表した、あの研究である。先のニュートリノの実験結果がどのように受け取られるのかはまだわからないが、「ヒ素微生物」の方はこの半年以上の間でさんざんな取り扱われ方をしている。こちらも驚天動地の発見のはずなのだが、詰めの甘い実験デザインのおかげで批判が渦巻いている。確かに実験が足りないと私も思う。きっと、うちの研究室のメンバーが同様のデータを持ってきたら、「もっと慎重にやり直せ」というだろう。少なくとも「リンの代わりにヒ素を DNA に取り込む」というならば DNA に共有結合したヒ素を証明するべきである。当の発表をした研究者達は、批判にさらされているのにも関わらず、追加実験を行っている様子がないということで、さらに批判されている(いまのところ)。

 この研究者達は、他の研究グループにも追試験をしていただきたいと、その「ヒ素微生物」を提供する姿勢を示しているそうだが、どうだろうか? これは、全データを公開するとした、ニュートリノの実験とは少し意味が違う。「ヒ素微生物」の存在を確実に証明すべき責任は、最初に発表した彼らにあるはずだ。ニュートリノの実験は、やれるだけのことをやったという研究者の自負が見えるが、ヒ素微生物の方にはそれが見えない。実験の余地があるのなら、自分でやれ。そう思う。

 例えば、このふたつの研究結果が、実はどちらも間違っていたとする。その時、それでもニュートリノの実験データは関係研究の資産として残り、ヒ素微生物のデータは誰からも顧みられることはなくなるように思う。あるいは、両者とも正しいことがわかったとする。その時も、前者の研究者達は讃えられるが、後者の研究者達への評価は多分微妙なものになるのではないか。ペニシリンを発見したフレミングが、「杜撰な実験手技で偶然発見しただけ」と(実際は違うのだが)毀誉褒貶相半ばする評価を受けたように。研究過程というのはそれほど重要だ。大発見なら大発見を支えるだけの精密な実験結果が必要だと思うし、発見の衝撃性を殊更に喧伝するのはどうかとも思う。

 そうそう、研究者は、「悪魔のように細心に、天使のように大胆に」、、、「蛇のように賢く、鳩のように素直に、、」、、、「チョウのように舞い、ハチのように刺す」、、、、。。。。

: 自分も研究者のくせに、批評家のようなことを書いてちょっと反省してます。すいません。

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posted by Yas at 22:02| Comment(0) | 科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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