2011年09月19日

ホリプレ論文篇17「正確な文章 ー 修飾語と被修飾語の関係をよく考える ー」

 先日の若手コロッセウムの少し前、本会への毎年の連続参加が途切れることになったトッシーがあまりに寂しがるので 
「じゃ、トッシーの可愛い写真を研究室紹介のときにスライドにしてプレゼンしてもろたらええがな」と慰めたところ、
「きゃー、先生、私のこと『可愛い』だなんて、、、」と有頂天な反応が返ってきた。

 これって一種のセクハラちゃうんか、という話はまぁ置いといて、、ここではトッシーの誤解をとりあげたい。私は「トッシーの可愛い写真」と言ったのであって「可愛いトッシーの写真」とは言ってない。「可愛い」は「写真」に係っているのだ。このあと、トッシーの誤解を解くために、懇切丁寧に私の意図を彼女に説明したのは言うまでもない。(あえて説明せんでもええがな、、という意見もあるが)

 この例のような日常のやり取りで生じる行違いはたいしたことにはならないが、科学論文でこういう曖昧な書き方をすると大きな誤解の元になる。長い論文でこのような表現が繰り返されていると、たぶんわかりにくい読みにくい論文になっているはずだ。

 例えば以下の文章。無理矢理に作成したので、多少ぎこちないのは無視して読んでいただきたい。

 食中毒の原因となるウエルシュ菌の CPE 毒素は強い細胞毒性と致死活性を持つ。近年、作用機序が明らかにされた CPE 毒素の受容体はクローディンであると考えられている。

 一見すると内容が読み取れるように錯覚するが、実はこの文章は科学的に正確ではない。一体、食中毒の原因となるのはウエルシュ菌か? CPE 毒素か? 強いのは細胞毒性と致死活性の両方か、細胞毒性だけか? 近年「作用機序が明らかにされた」のか、近年「受容体はクローディンと考えられている」のか? こうしたことが明確でないと、科学論文は成り立たない。

 修飾語(句/節)が何を修飾しているのか、明らかにしよう、、。ということだが、これが実は簡単なことではない。基本的には修飾語は被修飾語の直近(直前)に置く。そうすることで、かなり問題は改善する。しかし、どうしようもない時は文章の構成から変えないといけなかったり、文章をふたつに割ったりすることも必要になってくる。つまり定型的な処方箋がない。ということで、とにかく上の文章を直してみる。

 ウエルシュ菌の CPE 毒素は食中毒の原因として知られている。本毒素は強い細胞毒性を有し、動物個体に対しては致死作用を示す。すでに作用機序が明らかにされた CPE 毒素の受容体はクローディンであると、近年考えられている。

 あるいは、以下のようになる。

 食中毒の原因となるウエルシュ菌は CPE 毒素を産生する。本毒素は細胞毒作用や致死作用など、強い生物活性を持つ。近年、CPE 毒素の作用機序が明らかにされた。本毒素の受容体はクローディンと考えられている。

 うーむ、、。ちょこちょこっと考えた文章なのでなんかぎこちないが、私の言いたいことはわかっていただけたでしょうか? この文章で、少なくとも不正確な表現は排除できたと思う。

 科学的な文章は、正確性が厳しく要求されるが、これを一息に書いた文章で実現するのは難しい。そのために、何度も読み直すことが大切だ。

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