2011年07月21日

ホリプレ論文篇16「ひとつの文章にひとつの事項」

 文章を短くするためのコツは、ひとつの文章でひとつのことだけを述べるようにすることにある。短い文章が続くと、流れが悪くなるとか細切れになるとかいうのは気のせいである。ことに科学的な記述であれば、そんなことを気にする必要はない。

 さて、前回に修正した文章について、少し解説を加えたい。まず、修正前の文章をもう一度繰り返す。

 パスツレラが産生する皮膚壊死毒素(PMT)は気管支敗血症菌との混合感染により、ブタの進行性萎縮性鼻炎を引き起こす病原因子の1つと考えられ、細胞への作用には、GqとG12/13を介したシグナル経路の活性化が必要である。

 この文章には少なくとも3つの事柄が述べられている。ひとつは、ブタ進行性萎縮性鼻炎がパスツレラと気管支敗血症菌の混合感染で起こること。PMT がパスツレラの病原因子であること、PMT の作用が Gq系のシグナル伝達系を介していることである。だからそれぞれをひとつずつの文章で述べる。それだけである。簡単だ。

 次に後半の文章を見てみる。

 PMTは1285残基からなる146kDaのAB型タンパク質毒素で、N末端領域が細胞への結合と細胞内への移行に、C末端領域は毒素活性に関与すると考えられている。

 前回、この文章を以下のように書き直した。

 PMT は1285アミノ酸残基からなる分子量146kDa の AB 型タンパク質毒素である。その N 末端領域が細胞への結合と細胞内への移行に関与し、C 末端領域は毒素活性に関与すると考えられている。

 最後の文章は N 末端領域と C 末端領域の機能のことを書いている。だから先述の法則に従って二つの文章に分けるべきかというと、そうではない。タンパク質の N 末と C 末は一対のものであり、ここではそれぞれが別の機能を担っていることを書いている。このように相互に比較するべきものや対をなすような事項を述べる時は、ひとつの文章で書いた方がその対比が鮮明になる。なんというか、「花は紅、柳は緑」とか「イヌが西向きゃ、尾は東」みたいなことを思い浮かべて欲しい。この場合、「イヌが西を向く。尾は東だ。」みたいに文章を切ると司馬遼太郎さんの文章のような趣きがでるかもしれないが(司馬先生、変なこと書いてすいません)、比較とか対称とかいう意味においては不明確になる、というとわかっていただけるだろうか? (今回の話題からは離れるが、修正後の文章に「関与」という単語が繰り返されているのも同じ理由だ。)

 さて最後に、文章を短くしたことで少し話が理解しにくくなってしまった箇所を修正する。それは修正後の文章の前半にある。

 ブタの進行性萎縮性鼻炎はパスツレラと気管支敗血症菌との混合感染によって起こる。パスツレラが産生する皮膚壊死毒素(PMT)は、本菌の病原因子のひとつと考えられている。

 これでは、PMT と萎縮性鼻炎の関係がわかりにくくなってしまっているので、下のように書き直す。

 ブタの進行性萎縮性鼻炎はパスツレラと気管支敗血症菌との混合感染によって起こる。パスツレラが産生する皮膚壊死毒素(PMT)は、本症の病態形成に関与すると考えられている。

 ということになる。ちょっとハナシが具体的になりすぎたけど、どうでしょう? 

 ひとつの文章にはひとつの事項(特別な目的がある場合を除く)。この精神で文章を短くする、というのが今回のキモである。

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