2010年12月12日

ホリプレ・論文篇4「ホリグチの場合2」

 修士課程2年次の冬。獣医師の国家試験対策と修士論文の作成をせねばならない時期に、ほぼ同時に私は雑誌投稿用の英語論文を書いた。なぜ、経験の少ない大学院生にそんなことができたのか? というのが前回までのハナシ。この論文のタイトルは「逆受身ラテックス凝集反応によるボツリヌス毒素の検出/Determination of Clostridium botulinum toxin by reversed passive latex agglutination.」である。

 このタイトルにある「凝集反応」は当時の細菌検査において抗原を検出する一般的な方法だった。とくに、固定化した赤血球に抗体をコートして、対応する抗原の検出に用いる「逆受身赤血球凝集反応」は非常にポピュラーで、多数の関連論文がすでに発表されていた。ボツリヌス毒素に関する論文は、所属した研究室から多数発表されている。逆受身ラテックス凝集反応は、赤血球をラテックスビーズに代えたものである。つまり、ラテックスを赤血球に代えれば、参考論文がたくさんあった。

 そこでまず、和文も英文もとにかく関連論文をできるだけ多く集めた。そして、自分の能力を越えた質と量の論文を短い期間で書くために、関連論文中の使える文章をそのまま、あるいは必要な箇所だけ変えて、書き写したのだ。だから私の最初の修士論文と英語論文は、文章に限っていえば多くの論文の寄せ集めである。自分のオリジナルな文章で論文を書こうという気持ちは毫もなかった。それくらい焦っていたのだと思う。

 しかし、それが結果としてよかった。論文には論文に共通で特有な言い回しがある。数多くの論文から写経のように文章を写し取ったおかげで、英語は別にして、少なくとも日本語の論文の作法をある程度知ることができた。この一度の経験で日本語論文作成の敷居がずいぶんと低くなった。

 先達のやることを盗んだり真似たりというのは、「学び」の第一歩である。それを意識したわけでは断じてないが、やむにやまれぬ事情が偶然私にそれをさせた。このことは本当によかったと思っている。


、、人気ブログランキング参加中です、、
人気ブログランキングへ
応援のクリックをよろしく


この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]