2009年05月22日

インフルエンザについて真面目に考えてみる

 このブログの最近のインフルエンザの話題について、いくつかのレスポンスをいただいた。ひとつは、友人の感染症学者○○○さん、、。5月18日のエントリで、「マスクはインフルエンザの予防にほぼ無力」と書いた私の言い回しに「それはないんじゃない?」とすぐさまメールをくれた人だ。そのあとも、何度かのメールをやりとりしたが、最後に、
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堀口さん

○○○です。

インフルにマスクが有効な証拠はないと、英国保健省が言ってます。

ごめんなさい。おわびします。

http://www.nhs.uk/Conditions/Pandemic-flu/Pages/QA.aspx#Whofacemask
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というメールが来た。この人は自分の意見に固執することもなく、いつもfairに振る舞われる紳士である(このメールからもそれが読み取れるでしょ?)。前も書いたが、だから私はこの人を尊敬している。まぁその話は、またの機会に(実名で!?)紹介するとして、とにかくリンクされたサイトを見ていただきたい。マスクは有効で無いどころか、正しい使い方をしないとリスクが増加する、だからマスクはしない方がいいとまで書かれている(英語ですけど)。私はその見方に全面的に賛成するわけではないが、そういう見解がある、ということは知っておいても良いだろう。少なくとも1時間も行列を並んで(そんなに元気なら)マスクを買い求める必要はない。

 それと、高校時代の友人からもメールが来た。細かな内容の紹介は控えるが、「マスクが予防にそれほど有効でないことは知識としては知っているけど、それでも不安。何か感染を広げないための工夫ってないの?」ということである。このインフルエンザ騒ぎについては、「冷静に対応しましょうね」と何度か言ってきたことでもあるので、なぜ冷静に対応するべきなのかちょっと説明をしてみたい。

 いまのところ、新型インフルエンザの患者は300人ほどである。最初の国内感染の報告から1週間ほどしか経っていないので急激に感染が広がったように感じるが、そうではない。検出体制が整備されたので短い間にたくさんの患者を見つけ出しただけのことだ。関東でも少しばかり患者が出ているが少数なので考慮しないことにする。多くの患者を出した兵庫・大阪・京都の総人口は1500万人くらいで、仮にその半分の地域に患者が広がっているとして750万人。10万人あたりの罹患率は4人程度、,。関東地域を加えるとこの数字はずっと小さくなる。、、、

 一方、インフルエンザと同じように、咳やクシャミによって感染するとされる結核を見てみる。全国で結核患者として登録されている人数は平成19年末で 63,556 人である。この数字は平成19年だけに限らない。以前はもっと登録患者数は多かった。全国の10万人あたりの罹患率は 19.8 人である。患者数の多い大阪市の罹患率は 52.9人(!)だ。だが結核の蔓延が原因でパニックになったという話は聞かないし、結核の予防のために日頃からマスクをする人を私は知らない。

 私たちは、日頃全く気にもかけない結核の100-200分の1の患者数、罹患率が5分の1程度(大阪市なら10分の1未満)のインフルエンザを怖れて狂奔しているわけだ。なぜだ? 結核にはワクチンがあるから? たしかに結核にはBCGというワクチンがあるが、成人期の肺結核に対する有効性は疑問視されている。インフルエンザは変異していつ強毒になるのかわからないから? 、、結核でも遺伝子変異による多剤耐性結核菌が問題視されている。感染後に急性経過をたどるインフルエンザと慢性的に経過する結核との違いはあるが、この新型インフルエンザが特別強烈に危険なわけではない。それに、平成19年でいえば、結核での死亡者は 2,188人(一週間に40人以上の計算になる)にもなるのだ。一方、日本での新型インフルエンザの死亡例はまだない。

 どうでしょうか?インフルエンザが将来的に人類の脅威になる可能性は別に否定しないが、季節性インフルエンザにほぼ近い、といわれる新型インフルエンザを今の状況でことさらに怖れる必要はない。おどろおどろしい演出でインフルエンザのことを報道するマスコミに踊らされてはいけない(最近だいぶマシになったが)。美味しいものを食べて、しっかり睡眠をとって、疲れないように規則正しい生活をしましょう。気になるときは手洗いを忘れずに、,。インフルエンザに限らず、近寄る病気を遠ざけるために、,。もし、おかしいな、と思ったらすぐにしかるべき医療施設に行きましょう。感染する機会は残念ながら誰にもありますが、過度に恐れる必要はありません。インフルエンザに罹る可能性は、こんなエラそうなことを書いている私にももちろんございます。

 あ、そういえば、最近睡眠不足やし、、ちょっと疲れ気味、,や、やばいかも、、。



(この結核に関する記述、まちがってないっすかぁ〜? (結核研究してる)そうきちさーん? こめんとしてー)


posted by Yas at 22:51| Comment(2) | 科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ご無沙汰しています。インフルエンザ騒動、大変だったそうですね。私、米国微生物学会に1週間ほど行ってまして、大阪でこれほど大きな問題になっているとは知りませんでした。「たぶん帰国前には収束してるな。」と予想して渡米したのですが、渡米中に会社では緊急対策室が発足され、私に対して帰国後1週間出勤停止、全期間マスク着用命令がメールで届きました。米国でマスクしてると逆に変な目で見られてしまいました。先生のおっしゃるとおり、日本の反応はちょっと?ですね。ちなみに出勤停止は解除されそうです。
遅れましたが、ブログ移設1周年、おめでとうございます。
Posted by asakura at 2009年05月24日 23:20
 asakura さん。コメントありがとうございます。インフルエンザ騒ぎではいろいろと実害を被っているだけに、ちょっとムキになって書いてしまいました。でも、個人的に予防に気をつけられている方々をそれぞれ批判しているわけではないんですけどね。阪大も含めて、組織という組織が知性的な対応をせずに、風評被害とか事後の批判を怖れてヒステリックな対応に走るのはいただけません。

 また、夏に岐阜でお会いしましょう。(参加されるんですよね?)


Posted by Yas at 2009年05月25日 23:19
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