2010年12月28日

ホリプレ・論文篇5「ホリグチの場合3」

 さて、たくさんの論文の文章を抜き写して修士論文を書いたことで日本語論文の作法をある程度知ることができた私だが、英語論文は一度の写経経験でコツを掴めるほど甘くはない。こちらの方は修士課程修了のその時期から、いま現在までずっと苦しむことになる。

 私は修士課程(博士前期課程)を修了したあと、博士課程の学生としてそのまま同じ研究室に在籍することにした。以前にも書いたが、この研究室の教授、すなわち当時の私のボスは「科学者のための英文手紙文例集/講談社サイエンティフィック」というベストセラーを上梓した阪口玄二先生である。英文に関する本をものするだけあって、阪口先生の英作文に対する執念というか根気というか、エネルギーの注ぎ方はたいへんなものであった。

 博士後期課程在籍中の3年間に、幸運にも私は4編の論文の筆頭著者になり、3編の論文の作成に関わることができた。これは実に貴重な経験であった。論文作成の道具は、電動タイプライター、ワープロ専用機からパソコンのワープロソフトへと移り変わっていくような時代である。いずれにしても一人一台の機械などない。原稿をノートで書き、それを短時間に一息でタイプアウトして見直す、と言うことの繰り返しである。その時のノートの一部はいまも残っている。というか、残している。それを見ると、40枚綴じ込みのノートに4編の論文分の下書きがある。ということは1編の論文当たり10枚裏表で20ページの下書きを書いていたようだ。このことが英語論文執筆の訓練に役立ったかどうかはわからない。でも少しは役に立ったのだろうか。前回に「写経」と書いたが、本当に手書きで写経のようなことをしていたのだから、何かためになったと思いたい。しかし、基本的には色んな論文の英語をパッチワークのように切り貼りして作成していたのには変わりない。

 そうして作成した原稿を阪口先生に見ていただくためにお渡しする。一週間ほどで先生に呼ばれて教授室に出向くと、「お前はオレをなめとんのか? こんなひどい英語を読ませやがって」とまずお叱りを受ける。それから長い長い時間を使って論文の検討が始まる。そこは正しい英文を書くことに情熱を燃やされている阪口先生である。「ここはなぜ the か? あんたがこれを固有名詞と考えるなら、the はいらんぞ」とか、「この名詞は countable として使っているのか? Uncountable として使っているのか? Countable なら単数無冠詞はおかしい」とか、、「これは主語の取り方が悪い」とか、、。こちらは「知りませんがな、、適当に使える文章を切り貼りしただけですから、、そんな難しいことわかりまへん」と心の中で思っているがそんなことを言えるはずもなく、教授室で大抵は3時間ほど(の長さに思えた)、ほとんど説教というか拷問というか、とにかく英文作成指導が毎回繰り広げられた。これはしかし私の中では強烈な経験となって今も論文作成時に生かされている。

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