2009年07月07日

日本人の通弊

 少し前に半藤一利さんの「幕末史」を読んだ。

 講演をまとめたものということで、平易でとても読みやすい。幕末本としては上質だと思う。ただ、解説されていることは幕末オタクの私にとってはそれほど目新しいことはなかった。では私にとって面白い本ではなかったのかというと、そうでもない。こういう本では歴史的出来事や人物に関する作者の味のあるコメントが楽しめる。

 たとえばこんな感じ。半藤さんは云う。

 幕末。徳川幕府は、現在一般に想像されているような無能な政府ではなかった(この意見には私も賛成する)。情報収集能力もかなりのもので、ペリーが黒船を従えて来日する3年も前から、そのような日がやってくるという情報を掴んでいた。ところが日本人の通弊というのか、日本人は往々にして、確かな情報が入ってきても、起きては困ることは起きないことにしようじゃないか、いや起きないに決まっている、大丈夫、これは起きない。という判断になってしまう。それでなんの対策をたてるでもないまま、ペリーの浦賀来航を迎えてしまった、太平洋戦争末期のソ連による満州侵攻も同じ、というのである。

「起きては困ることは、起きないことにしよう」か、、、。

 見知らぬアメリカという国が日本を開国させるべく交渉にやってくると知らされても、そりゃ飛躍的な想像力でもなけりゃ、鎖国中の幕府が現実的に対処する方策をあらかじめ講じるなんて考えにくい。半藤さんの云うような日本人の通弊とは違うように私は思うが、それでも「起きては困ることは、起きないようにしよう」という気持ちはよくわかる。

「起きては困ることは、起きないことにしよう」だ、、

 たとえば、引き受けた原稿の〆切なんか来ない、、、とか、、。
 やっとの思いで獲得できた研究費の、助成期間の終了日なんか来ない、、とか、。
 資料まとめや準備や根回しをしないといけない、イヤな会議なんか未来永劫開催されない、、とか。いいよなぁ、、。

 でも、修士論文や博士論文の提出〆切日なんか来ないとばかり、のんびりしている学生さんには腹を立てるかも、,。

「起きては困ることは、起きないことにしよう」か、、、。含蓄のある言葉じゃ。

 あ、同じ半藤さんの書いた「昭和史」も読もうっと。半藤さん、せっかくの著書を変な風に楽しんですんません。

posted by Yas at 22:22| Comment(0) | 非科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする