2009年01月31日

パリ3日目

 東から西、つまり日本からヨーロッパに来るとたいてい時差ボケはそれほどひどくない。それが今までの印象だったが、今回はちょっと違う。3日目の朝を迎えても一向に体調がよくならない。朝は4時〜5時に眼が覚めて、昼過ぎには眠くなる。身体はだるい。いつもの欧米出張のように食事はおいしいが、たくさんは受け付けなくなる。
 同行の永井さんによると「年をとるごとに時差ボケはひどくなってアダプトするのに時間がかかるようになりますよ」とのこと。ほんとにそうだ。

 しかしこの日は本番のシンポジウムがある。私の口演は午後の2番目、、危険な時間帯である。という心配をよそに、関係各者の挨拶でシンポジウムが始まった。自分の講演前に座長のお務めがある。そのセッションの最初の演者は、この世界で超大物のPascale Cossart である。さすがに何もコメントせずに講演を始めてもらうわけにもいかないので、「著名な Dr. Cossart の紹介ができて幸せです(ある意味ほんとのことだが)」とか言いながらいらんことをしゃべってしまった。おまけに、日頃なじみのないフランス人研究者を紹介するのに、演題タイトルを間違って紹介してしまった。これがつまずきのはじまりだった。

 ランチは会場近くのレストラン。もちろんフランス料理だ。お昼からワインがでるのは普通のこと。このワインがINRA本部所長が用意してくれたとかいう逸品でとてもウマい。んで、隣の席にいた Eric Oswald に勧められて2杯も飲んでしまった。やはり午後に口演のある林さんは「お酒が入ると口が滑らかになっていいよ」というくせに、自分は2杯目のグラスには口をつけない。私は逸品を残してしまうのを惜しんで2杯目もきっちり飲み干す。普通の時ならまだしも、体調よろしくないときにこれは効いた。これがふたつめのつまずき。

 案の定、自分の講演前に眠くなってきた。こんなことではイカンと気合いを何度も入れ直そうとするが、いまいちピシッとしない。そんな状態で口演を始めるはめになった。これが決定的なつまずきになった。
 口演というのは、喋っている最中に自分の喋りに酔ってしまうくらいがいい。逆に一番危険なのが、自分の喋りに飽きてしまうことである。それで聴衆の反応に関係なく自分勝手に話を進めて尻すぼみに話を終えてしまうというのが最悪のパターンだ。この「飽き」が、話を始めてスライド4枚目くらいにやってきた。ただまぁ、私もそれなりに経験は積んでいるので、なんとか踏みとどまって必要最小限のことを考え、聴衆の様子を見ながら話を進めて終えることができたが、終わったときにはほとんど集中力を使い果たして疲れ果ててしまった。、、、そこで質疑応答が始まった。
 たいてい日本人の質疑応答でのつまずきは、質問の内容が聞き取れないことから始まる。私もそんなことがしょっちゅうあるが、この日は違った。質問の内容はよくわかる。ところが、こっちが丹念に答える気を失ってしまっていて、口からでまかせの答えをよく考えずに英語で話し始めてしまった。経験のある方も多いと思うが、英語の下手な人間があまり考えずに英単語を口にしだすとたいていちゃんとした文章にして喋ることができない。それで、アホ英語で、しかも訳のわからん答えをつづけるはめになった。しかもそのときは集中力ゼロで、適切な英単語すら出てこなくなってしまった。いや〜、あの答え、たとえ日本語でもアホな答えやったと思う。答えているときに、「おい、ホリグチ大丈夫か?」みたいな様子で笹川先生がこちらを見たのが見えた。はぁ、すいません。超大反省である。

 あとで、質問してくれた人に「すまん、too excited to make a proper answerやった」といってちゃんとまじめな答えを説明したが、、大反省。面白かったと言ってくれた人も何人かいたが、こうなると何を言われてもただの慰めに聞こえてくる。ほんと大反省。
 私は留学経験がない。きっと留学した人は同じようなことを短い留学期間中に何度も経験して英語口演の流儀を作り上げていったのだと思う。留学経験のない私が今回のような大きな失敗を繰り返さないためには、無理からでも積極的にこういう機会に身を投じていくことが大事なのかもしれない。

 それにしても、思う。「英語なんかしゃべれない、しゃべらない」と豪語してノーベル賞受賞講演さえ日本語で済ませてしまったという益川敏英先生を見て、「英語ができなくてもノーベル賞が取れる」と感じる若い人がいる、という新聞記事を見たことがある。
 そう思ってる人がいるとしたら、それは完全に間違っている。しっかりと自分の研究の世界を作り上げたいのなら英語は必須である。私の知る限り、好きで英語をぺらぺら喋っている日本人研究者は一握りで、ほとんどみんな苦労してイヤな思いして英語と格闘しているのが現実だ、、。英語くらい勉強しなさい。

 益川先生、、、「英語ができん」などとえらそうに言わないでいただきたい。英語くらい勉強してください。
posted by Yas at 14:31| Comment(0) | 科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パリ2日目

パリ、二日目。

 ホテルは、用務先のINRAの近くにある。古い建物の内装を新しく現代風にリフォームした、小さいが快適なホテルである。普通の家のダイニングルームに少し手を入れたような空間で朝食をとる。
IMG_0212.JPG
 こんな感じ。
 
 こういうタイプのホテルはヨーロッパでよく見る。ひょっとしたら日本でいうところの民宿に相当するのかもしれない。朝食後、INRAの海外渉外部のような部署の責任者の Griveau さんの案内で、超豪華な観光バスにたった7人で乗り込んでパリ西部郊外にあるINRA・Jouy-en-Josas の研究所を訪問した。
IMG_0211.JPG
 超豪華なバス、、、、


 広大な敷地内に個別の研究所が点在するような、日本では考えられない環境の中にその研究所はあった。

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 広大な敷地にある研究所、、、、


 訪問したのはそれらの研究所のうち、乳製品の製造や品質に関する微生物学を担当してる(ようだ)MICAという部局と、たぶんゲノム解析を得意としている(ようだ)UEPSDという部局である。部局名がフランス語なのでいまいちイメージが頭の中にはまらない。まぁ、とにかくそれぞれ2-3名の担当研究者が研究内容をレクチャーしてくれた。次々とレクチャーされて、それぞれが終わるたびに「質問ある?」みたいな感じで担当者に尋ねられていると、なんだか試験されてるような気分になってくる。先方が用意してくれたランチでソーシャルカンバセーション。んでまた、レクチャー。この研究所に到着したのが午前10時30分頃。すべてのプログラムが終わると午後5時半を回っていた。一生懸命聴いて、一生懸命質問したつもりだが、帰りに阿部っちに「ホリグチさんの突っ込むような質問は、すごいね〜」と感心とも注意ともつかないことを言われた。そうか〜、、、う〜ん、、そうかも、、。確かに社交辞令とは違う質問をやってたかな、、?「あなたはこう言ってたけど、あれは調べたのかっ?」みたいな、、。まぁええか。お互い研究者なんやし。それに、丁寧で婉曲な質問なんて私の英語力では無理。どうしても直接的な聞き方になってしまうのだよ。

 もどってきて、INRA本部近くのレストランでレセプション食事会。パリの夕食は遅くて、だいたい午後8時以降から外食店の席が埋まり始めるそうだ。すべての予定が終わって部屋に戻ったのは午後10時過ぎ。時差ボケもあって、もうヘロヘロ。さっさと寝た。


posted by Yas at 02:22| Comment(0) | 科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする