2006年12月21日

自転車の安全利用の促進に関する提言について(3)

 さて、前回までは「自転車を交通主体のひとつとして位置づける」としながらも「自転車の歩道(歩道ですぜ歩道)通行を認める」というちぐはぐな議論展開について紹介した。その根拠に、自転車と自動車は車道を走るものという事実に目を伏せて、「両者間の車道での事故が最も頻繁である」という奇妙な統計解釈がなされた末に「ある条件では自転車の歩道走行を認めても良いのではないか」と云うのである。しかしこの話題のエントリの最初に云ったように、一方でこの10年間で対歩行者の事故は4倍以上増加している。この場合は歩行者が普通の状態で車道に出るわけはないので、これらの事故は歩車道の区別のない道路上か歩道上で生じているはずである。にもかかわらず、警察庁は自転車を歩行者専用道路であるはずの歩道に上げようというのだ。これが、「安全利用の促進に関する提言」といえるだろうか? その論理展開がむちゃくちゃということで、私はこの提言の価値をほとんど認めていない。

 また、多くの自転車愛好家(あるいは運動家)はこの提言にかなり目くじらを立てている(例えばこの人など http://japgun.hp.infoseek.co.jp/ )。警察庁はこれまでに何度も自転車を歩道に押し込めようとしてきた、この提言もそのための布石である、というのである。私にはそれはどうだかわからない。この提言には自転車の多様性(そもそもそんな多様性は自転車の歩道走行を事実上認めている日本でのみ見られるものではあるが)を認め、かつ走行性能を発揮できる環境を整えようとする文言もあるので、論理展開のアホさ加減にあきれつつも実は私はそれほど自転車の将来を不安視していない。しかし、日本の交通事情においては自転車はまともな交通手段としての権利をちっとも守られていない、というのは常日頃感じている。

 大きな国道ではかなりの確率で「自転車歩道通行可」の標識が上がっている。これを真に受けて自転車が歩道を走るといろいろ問題がある。たとえば、(大阪近郊に居住していない人、すまん)梅田新道の交差点。あそこは歩道と車道の間にはとぎれることなくガードレールが付けられ、歩行者には歩道橋が用意されているが歩道走行の自転車は交差点を渡ることはできない。またたとえば(大阪北摂ローカルでない人、すまん)、豊中はロマンチック街道と中央環状線の交差点南側の歩道を東から西に通過するとする。下り坂でスピードが出る。ところが歩道はいきなり下り階段に変わっている。めっちゃ危ないがな。さらにたとえば、中央環状線を逆に池田側から豊中に入るときに差し掛かる阪大豊中キャンパス手前の跨線橋。ここは自転車通行禁止だ。だが、歩行者用の階段付き歩道はあるが、自転車が利用できるバイパスはない。下には阪急宝塚線が走る。自転車はこれに突き当たり、北へ500メートルほど走って踏切を渡るしかない。このように、自転車でそれなりに気合いを入れて走っていると、「どうせぃっちゅうねん」という場面にしょっちゅう出っくわす。

 権利が守られていないので交通ルールを遵守する(あるいは遵守させる)という意識も稀薄である。傘をさして携帯電話しながら車道を右側通行するような自転車走行が許される(ホントは許されてませんよ〜、そこのあなた〜)のはそのせいだと思う。自転車愛好家・運動家は車道上の自転車専用レーンをまず早急に整備すべきだろうと云う。そりゃそうだが、日本の道路事情を考えるとそれをすぐに進めるのはなかなか難しいだろう。かといってロードバイクが歩道を疾走するのは危険きわまりないし、そもそも段差が多くて舗装の程度の低い歩道をスポーツバイクが長く走ることはできない。また、ママチャリに車道のみを走行するように奥様方やダラダラ通学高校生に求めるのは酷というもんだ。

 そこで! 当座のしのぎとしてこんな作戦はどうだろう? 本質的に自転車を二種に分けてしまう。ひとつはいわゆるスポーツバイク。これに乗る人は覚悟を決めて車道を走るべし。もうひとつは下り坂であっても時速10キロメートルくらいまでしか出ないようになっている歩道走行用モデル(これをママチャリZ(ゼータ)と呼ぶ)。そういうのを自転車メーカーに作ってもらう。スポーツバイクは決して歩道に上がってはならない。信号無視も飲酒運転ももってのほかだ。一方でママチャリZ(ゼータ)は決して車道に降りてはいけない。この二車種を運用している間(30〜50年くらいかかるかも)に自転車レーンを整備するっていうのはどうでっしゃろ?

 日本の自転車事情は異常である。海外の友人が日本に遊びに来たときに、彼らは一様に無茶なスピードで歩道を走る自転車に目を丸くする。仕方ないので、「日本では自転車は子供の遊びのひとつのような扱いを受けているのだ」と説明する。そうすると彼らは納得する。そう、日本の自転車のあり方は官民ひっくるめて「子供の遊び」なのだ。「ふうん?」と半信半疑のあなた、一度真剣に自転車でそれなりの距離を走ってみんさい。わかるから。

posted by Yas at 23:16| Comment(0) | 自転車 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする