2006年10月31日

急いではいけない

 科研費の計画調書を書き上げた。電子申請を終了した数時間後に、本学の研究協力係から訂正依頼のFaxが届いた。迅速で正確無比なチェックに脱帽。お役人といえば四角四面の紋切り型が不評をかったりするが、あの正確な対応は粗忽な私にはとても真似が出来ない。おかげで安心して申請が出来ます。しかぁ〜し! 申請が採択されるかどうかはまた別のハナシ。

 ところで、村上春樹さん、フランツ・カフカ賞受賞おめでとうございます。実は私には、一生かけてゆっくり作品を楽しむために続けて読まないように心がけている作家が数人いる。村上春樹さんや司馬遼太郎さんはその代表格だ。深く感銘を受けた作品は、司馬さんではご多分に漏れず「龍馬がゆく」だが、村上さんでは実はちょっと異質な作品「アンダーグラウンド」なのだ。それまでに「羊をめぐる冒険」や「1973年のピンボール」は読んでいたものの、まぁ楽しく読める作家という認識であった。ところが、「アンダーグラウンド」には頭を殴られたような衝撃を受けた。例の、オウムサリン事件の被害者やその関係者に村上さん自らインタビューをし、それを記録にとったというだけの体裁なのだが、これがあなた、文章家としての村上春樹さんの凄さを浮き彫りにしている。事件によって最愛の人を亡くした方が村上さんのインタビューを受けているあいだに感極まってすすり泣く、その声が行間から聞こえてくるのだ。この文章力はおそろしい。昨日紹介した井上さんの画がセリフの文字を凌駕して人物の心情を表現するのに似て、村上さんの文章はその空間の風景や音を紡ぎだす。これだけの文章力の人が書く小説が面白くないわけがない。、、、、でも急いで次々読んではいけない。ゆっくり読んで一生楽しむのだ。
posted by Yas at 23:17| Comment(0) | 非科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする