2006年10月20日

Impact factor バブル?

 Nature という雑誌社(正しくはNature Publishing Groupか)は面白い。雑誌の中身が面白いというハナシではなくて、売り方が、面白い。いま学内で図書関連の委員を担当しているのだが、そのいくつかの委員会では雑誌購読の予算繰りのハナシが絶えず審議されている。Nature関連誌は10数年前からどんどん増えており、いまは医学生命系と物理系をあわせて15か16誌、これにレビュー誌その他をあわせると30誌と少しになる。阪大では、これらをすべて学内のどこかでインターネットアクセス可能(すべての関連誌を自由にいつでもどこでもアクセスできるという意味ではない)にするのに○○○○万円(すまん、さすがにこれは書けん)程度を支出する予定である。というのはNPGの「2006年中に契約すると現行アクセス権は1997年から最新まで認め、解約後のアクセス権についても優遇するが、2007年以降に契約した場合ではアクセス権は契約年を含む過去4年間のコンテンツのみ、解約後も契約年のコンテンツのみしかアクセス権は認められません」、という脅し(「脅し」とあえて言う)に屈してのことだ。しかもこの契約には35%のディスカウントがあるものの、33%までの売る側の一方的な値上げを認めるプライスキャップが設定されている。これって、やりたい放題と違うのか?

 ここまでNPGが強気なのには、もちろんそれぞれの雑誌の高い impact factor が背景にある。そこに掲載したい学者が沢山いて、論文が掲載されることが高いステータスになる。そしてそれだけ価値の高い論文が掲載されるので注目度も高い。学問のあるところNature関連誌は必ず必要だ、というわけで、売る方は強気にもなるわけだ。実際、調べてみるとNature関連誌の impact factor は軒並み10点以上、高いもので30点前後だ。

 だが、私が研究のまねごとを始めた25年ほど前、impact factor が10点も20点もある雑誌がこれほどたくさんあったのだろうか?この25年のあいだにCellにもMolecular Cell だの Cancer Cell だのの姉妹誌が出来たようだし、今後も増える予定(Cell Host & Microbe というのも創刊されますぜ、ダンナ)だ。してみると、いまのすべての雑誌のimpact factorを合算すると、25年程度前のすべての雑誌のimpact factorの総和を軽く凌駕するのではないのか? ということはどういうこと? impact factor は被引用回数から算出されるから、ひょっとしたら総被引用回数(つまり総引用回数と言うことになる)が増えてるのか? そりゃ世の中の総論文数が増えれば引用文献数も増えるだろう、だから引用回数も増えて当たり前、と考えるアナタ! アナタは正しいかも知れない。だがその論文は学者が書くのだ。つまり今の学者は昔の学者よりも沢山の論文を馬車馬のように書き続けて、それで世の中の総 impact factor を高騰させてるってことにはならんのか? これって、、、地価高騰が地価高騰を呼んだバブル景気に似てない?、、「昔はNatureだけだったが今は色んな姉妹誌が出来たから論文が採択される可能性が広がったぜ、やれいけそれいけ!」と考えるオレたち、落ち着け! 
posted by Yas at 18:56| Comment(0) | 科学的日常 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする